利益を出しながらSDGsに適したビジネスを行うために、どういったアプローチ方法があるのか?
の疑問にこたえます。
SDGs (持続的な開発目標)とは、2015年に国連サミットで採択された、2030年までに、持続可能でよりよい世界を目指す国際目標です。
この記事では、企業が利益を出しながらSDGsに適したビジネスを行うためのアプローチ方法6つを、事例と一緒に分かりやすく解説します。
結論からいうと、次の6つです。
- マッピング
- マッチング
- 社会的インパクト投資
- 参照手段としての活用
- ESG投資対応
- 経営への実装
この記事では、実際に企業向けのSDGsコンサルを行っている方の著書「SDGs思考 2030年のその先へ 17の目標を超えて目指す世界」をもとに解説します。
「SDGsいまいちよく分からない…」という方は、この記事も併せてご覧ください。
SDGsへのアプローチ6つ

マッピング
自社のサプライチェーンを分解し、各プロセスで事業活動とSDGsへの関わりを関連づける方法です。
自社ビジネスとSDGsへの紐づけを可視化でき、各目標の取り組みについてKPIを設定し、具体的な施策の立案に進めることができます。

[出典]田瀬和夫氏「SDGs思考 2030年のその先へ 17の目標を超えて目指す世界」
【事例】伊藤園グループ
自社ビジネスについて他に類を見ない徹底的なマッピングを行い、経営を行っています。
企業の社会対応力向上、共有価値創造に向けて、国際標準であるISO26000をガイドラインとしたCSR体系を導入しています。加えて、SDGsの企業への導入では共有価値の創造の考え方が示され、これをビジネスチャンス面とリスク回避面の両面での活用が必要ですが、CSVを組み合わせてCSR/CSV経営を実践しています。(注2)

[出典] 伊藤園グループとSDGs
ISO2600を中核主題CSRの取り組みとして、次の7つのテーマを設定しています。さらに、製品の適切な情報開示や茶産地育成事業におけるモニタリングなど51項目にKPIを設定しています。
- 組織統治
- 人権
- 労働慣行
- 環境
- 公正な事業慣行
- 消費者課題
- コミュニティへの参画及びコミュニティの発展
伊藤園グループのレベルまでできれば素晴らしいですが、SDGsに取り組む企業の多くは、SDGs目標のマッピングにとどまってしまっています。
SDGsへの紐づけを第一歩として、それを利益向上のための事業戦略に引き上げるには、KPI設定と具体的な施策の立案が必要です。
マッチング
マッチングは、顕在化している社会課題と解決策を掛け算することにより、新しい価値を生み出す手法です。
メリット
- 具体的な事業アイデアに結びつけやすいこと
- 利益を生むビジネスを創出しやすいこと
デメリット
- 単一セクター・単一目的というシングルイシューに対する取り組みになりがちで、各目標観のリンケージを生かして正の連鎖を起こすことにつながりにくい
【事例】tabeloop
「無くそう!食品ロス 減らそう!産地ロス」をスローガンに食品ロス削減を目指したフードシェアプラットフォームです。BtoB / BtoCの取引ができ、売り手と買い手は会員制です。
売り手は、良質であるにもかかわらず余剰になり廃棄せざるを得ない食材をtabeloopのサイトに出品し、買い手が購入することで食品ロスにつながります。また、売上の一部が飢餓撲滅のために寄付されるという仕組みです。(注3)

tabeloopは次の事業に取り組んでいます。
- 売り手/買い手とのサービス連携により事業拡大をはかりつつ
- SDGs達成に向けて食品ロスについての広報・啓蒙活動
- 自然災害による規格外野菜などの購入
- 生産地・飲食店を活用した食育事業 など
同じようなスキームのプラットフォームに、「KURADASHI.jp」があります。「KURADASHI.jp」は食品ロス・飢餓撲滅の取り組みが評価され、環境省 第6回グッドライフアワードで環境大臣賞を受賞しました。
社会的インパクト投資
社会的インパクト投資は、財務的リターンと並行して社会的・環境的インパクトを同時に生み出すことを意図する投資の考え方です。投資を決める際に、金銭的なリターンだけでなく、社会に与えるプラスの影響も加味して判断することによって、社会と経済のバランスをはかろうというものです。(注1)
この一つの形態として、自治体が一部の事業を民間に委託することにより、コストの差の一部を投資家が利益として得る社会的インパクト債(SIB)があります。

[出典] 田瀬和夫氏「SDGs思考 2030年のその先へ 17の目標を超えて目指す世界」
メリット
- 社会的インパクト投資は、SDGsの要請(特に招集者の権利や格差の解消など)にダイレクトにこたえることができます。
- 測定可能な社会的インパクトを生み出すと同時に経済的リターンも得られる投資です。国際社会でも注目され、市場として急成長しつつあります。
デメリット
- マネタイズが難しいです。利益を持続的に出せるビジネスモデルの組み立てには、アントレプレナーや専門家の知見を活用していくことが必要となるでしょう。
【事例】八王子市の検診受診奨励事業
早期に治療を行えば高い確率で治療が可能となる大腸がんに注目し、検診受診奨励事業を実施して約1千万円の資金を調達しました。
参照手段としての活用
SDGsの登場以前からCSR/CSV経営に取り組んできた企業もあります。そのような企業は、無理に事業をSDGsに合わせるのではなく、方向性を確認するための参照手段としてSDGsを用いる場合もあります。このようなケースはごく稀です。
【事例】味の素グループ
2005年からCSR経営を掲げ、2009年には「21世紀の人類社会の課題」を発表し、味の素グループが取り組むべき課題として、「地球持続」「食資源」「健康な生活」の3つを選定しました。社会課題の解決に取り組み、社会と価値を協創するASV (Ajinomoto Shared Value)を掲げ、グループ全体で世界課題に向き合い、行動する姿勢を示しています。(注4)

ESG投資対応
ESG投資は、環境(Environment)、社会(Social)、ガバナンス(Governance)に配慮した経営を行っている企業を重視・選別して行う投資の形態です。
従来の投資が売上高や利益などを示す財務指標を重視しているのに対し、ESG投資は、環境・社会・ガバナンスへの配慮が、中長期的な収益の増加や企業の持続的成長につながるという視点に立ち、財務指標では可視化されにくいリスクを排除できるという発想に基づいています。(注1)
2018年にはESG投資の残高が3400兆円(約33.7兆ドル)を超えました。これは世界全体の運用資産の3分の1を超える金額であり、SDG市場は倍々ゲームのように急拡大しています。(注5)
経営への実装
SDGsを経営理念と事業計画へ実装していく手法です。
企業の経営理念をSDGsの視点から見つめなおし、事業活動が社会に与えるインパクトを価値創造のストーリーとして具現化する営みです。
前述の5つのアプローチと異なるのは、「SDGsに貢献する」のではなく、「経営そのものがSDGsに支えられている」という考えに基づいていることです。(注1)
【事例】コマニー
コマニーは、石川県でパーテイションの製造販売を行う会社です。自社の強みを空間制御と捉え、事業活動とSDGsの実現をはかる「メビウスモデル」を策定しました。
SDGsアジェンダ(前文)に記されている「大きな自由における普遍的な平和の強化を追求する」ことは、私たちコマニーが目指す「経営の理念」を実現することとつながっています。私たちは、事業活動を通じて経営の理念の実現を目指し、それと同時にSDGsの実現に向けて、これまで以上に広い視野をもち活動を進めていきます。
[出典] SDGs を実現する「コマニーSDGs∞(メビウス)モデル」

Take Action!

今回は次の6つのSDGsへのアプローチをご紹介しました。
いかがでしたか?読者の皆さんの会社や事業に取り入れたいものはあったでしょうか?
- マッピング
- マッチング
- 社会的インパクト投資
- 参照手段としての活用
- ESG投資対応
- 経営への実装
より具体的にSDGs対応の手法や思考方法などを知りたい方は、田瀬和夫さんの「SDGs思考 2030年のその先へ 17の目標を超えて目指す世界」がおすすめです。
頑張るあなたを応援しています!次の記事で会いましょう!
「SDGsいまいちよく分からない…」という方は、この記事も併せてご覧ください。
出典
(注1) 田瀬和夫氏「SDGs思考 2030年のその先へ 17の目標を超えて目指す世界」
(注2) 伊藤園グループとSDGs
(注3) tabeloopとは
(注4) 味の素グループの目指す姿
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